「宝鑑」とは「手本・模範。またはそれを書いた書物」のこと。
近デジをこのキーワードで漁ると、いろいろな「宝鑑」が見つかる。 今日は、女性向けの「宝鑑」を二冊紹介。 ■『現代女学生宝鑑』(星野すみれ 著 明39) Wikipediaによれば、著者の星野すみれは「美少女アイドル歌手として幅広い世代に絶大な人気を誇る」人物だそうだ。amazonで確認したところ『いけない官能教室』、『妖精少女Y―禁断の蜜のしたたり』といった著作もあるようである。アイドル歌手にしては中々ハジケているではないか……と、ちょっとボケてみましたがおもしろくなかったですねすみません。 女子学生を目指す少女に向けた本である。 学校生活の心得、下宿屋の選び方や生活の指針、勉強にあたっての豆知識など、宝鑑というだけあって、扱っている内容は多岐にわたる。 例えば「作文の栞」という、女学生らしい文章の書き方について指南する項。 として、まずは候文の文法を概説し、サンプルとして樋口一葉らの雅な文章を引用し、さらに「海外にある友の許へ遣す文」などユースケースごとの模範文を掲載するという念の入れようである。 さらには和歌の作り方、新体詩の作成、万葉仮名に美文調に漢文の熟語解説。四季折々の料理に西洋料理のレシピ、生け花、裁縫、運動(テニス)、水彩画法。英文法に数学公式。衛生法に養生法に化粧品についての解説… 模擬入試問題まで出ている。 「高等女子師範学校程度の入学試験問題」なのだそうだ。 女子高等師範学校といえば、だいたい16~17才で入学試験に臨む勘定である。年齢だけで考えると、今の大学入学試験相当といえるだろう。 いくつか引用するので、ちょっと挑戦してみてほしい。 …さすが師範学校、かなりレベルが高いではないか。 特に「裁縫」の問題など、今時のJKで明答できるヤツはそうはおるまい。 …当たり前か。 さて、もう一冊は、 ■『女子宝鑑(婦人重宝玉手函)』(大西啓太郎 編 明治39) こちらは、進学ではなく結婚し家庭を持つ女性をターゲットにした宝鑑である。 同じ『宝鑑』でも『現代女学生宝鑑』と違い、本書は編著者が男性である。 そのせいか、『現代女学生宝鑑』とはかなり趣が異なっている。 単なる実用的知識の集成ではなく、随所で編著者の思いが熱く語られているからだ。 ちょっと著者の御高説を聞いてみよう。 恋愛というのはいつの世でも若いご婦人の一大関心事と思いますが、そのあたり先生はどうお考えで? 「ハイカラ者流は、しきりに恋愛の神聖を唱道するが、我々はむしろ結婚の神聖を望む上から、初め熱くて後は冷ややかな恋愛主眼の西洋風結婚よりは、初めは冷ややかだがだんだんと相知り相慣れついに相愛する日本風の結婚の方を奥ゆかしく思うものである」 ふむ。なるほど。まあ、そういう考え方もあるかも知れないですね。 ところで、最近は「結婚の道」を選ばずに、学問の道に進む女性も多いようですが。 「女子もまた学問さえすれば偉いものになれる、ナニ男子などに負けるものか、と自己の体質やまた先天的特性を忘れて、無闇に学問万能でやり通そうとする、そのうちに二十歳が二十五となり二十五が三十となって、最も大切な結婚期を通り越しいわゆるオールドミスとなって、やむを得ず独身論を唱えだすような不具者になり終わるのである」 (きょろきょろあたりを見回しながら)えー、先生、そろそろお時間ですので… なんつーか、こりゃ「宝鑑」というよりは檄文。 俺は女性ではないので、本来の読者たるべき女性の感想はわからないが、今だったら女権拡張論者から焚書を食らいそうな激しさではある。 だが諸君、こんなもので吃驚してはいけない。 近代文書の宝庫である近デジには、さらにトンデモない「女性」本が埋もれているのである! といったヒキを作りつつ以下次回。
by signal-9
| 2012-08-09 14:24
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