近デジでは、いわゆる「陰謀モノ」もけっこう見つけることが出来る。
近デジの対象時代は主に明治~昭和初期なので、やはり大正中期に「輸入」された「ユダヤ・フリーメーソンの陰謀」モノが多いようだ。 まず紹介するのは、大正14年刊(ただし近デジのものは昭和4年の改訂13版)『世界革命之裏面』(包荒子 著)。 包荒子こと安江仙弘は帝國陸軍の軍人。 本書はその筋では有名である。 あの『シオン長老の議定書』(本書では『シオン聖賢集会の議定書』)の初完訳が掲載されている本だからだ。 この文章に続き、以下のような注意書きがある。 これより先ずマッソン秘密結社とユダヤ問題の事実の二章を読み而して後シオンの議定書を熟読吟味せらるべし 「マッソン秘密結社」。 いうまでもなく、今で言えば「フリーメーソン」(フリーメーソンリー)のことだ。 この「マッソン(マツソン)」という独特の表記は、近デジの検索ワードに使えるくらい定着していたようである。 『共産党の黒幕猶太民族の大隠謀を曝露す マツソン秘密結社の正体と我国の現状』(立正愛国社出版部 昭和3)というそのまんまの小冊子も近デジで読める。 内容は同工異曲なので俺みたいな物好き以外はわざわざ読むまでもないけど(笑) そんな中でも『猶太研究』(大正10)。これはちょっと珍しい本だ。 どこが珍しいかというと、この本、編者が『北満洲特務機関』。 つまり満州北部で活動していた帝国陸軍の諜報機関が刊行したものらしいのである。 当然と言うべきか奥付によると『非売品』。 緒言に書かれた; ここに頒布を受けたる各位の注意を煩わしたき件あり。などという辺りがいかにもスパイっぽい。 さて近デジには、猖獗を極めるユダヤ陰謀論へのカウンターとして刊行された、満川亀太郎の『ユダヤ禍の迷妄』(こちらも昭和4年刊)も所蔵されている。 同時代に刊行された様々なユダヤ陰謀の本や論説が批判の対象として引用されているので、この問題のいいreferenceになりそうだ。 だが、この本の萌えポイント(ぉい)は、前回紹介した『太古日本のピラミッド』でおなじみの、酒井勝軍のご尊顔が拝めること。 酒井が以前に書いたユダヤ陰謀本『猶太民族の大陰謀』、『猶太人の世界征略運動』などは、当然本書で批判対象となっているのだが、 別に酒井がフツーになったということではない。言ってしまえば(酒井自身にはその認識はなかったかもしれないが)、ユダヤ陰謀論から日ユ同祖説にトラバースしただけなんであるが。 【20120813追記】 その後、『猶太民族の大陰謀』と『猶太人の世界征略運動』を読んでみて、酒井をいわゆる「ユダヤ陰謀論」者と同じに括るのは乱暴過ぎると思ったので、この段落は撤回する。 端的に言えば酒井の「ユダヤ本」の論調は、いわゆる「ユダヤ陰謀論者」のように「反ユダヤ」的とは言いにくいからだ(ま、その上で陰謀論には肯定的であるようなのだが)。 【20120813追記ここまで】 なので、反ユダヤ陰謀論である本書に付録として掲載されている、平凡社主催の「ユダヤ禍問題座談会」にも、酒井は満川らと並んで出席しているのである。 本書口絵にその座談会の写真が掲載されているが、写真家のアラーキー(荒木経惟)に似たくさい酒井勝軍は、俺の期待通り、いかにも胡散臭い(良い意味で^^;)、イイ顔のオヤジであった。 尚、この酒井勝軍という興味深い人物については、先月末(2012/7/31刊)出たばかりの、久米晶文『酒井勝軍: 「異端」の伝道者』がたぶん初めてのまとまった評伝だろう。 こちらは俺は未だ読んでいない(…だって高いんだもの^^;。4000円は、俺みたいな貧乏人はさすがに躊躇する値段)が、興味のある向きは是非。
by signal-9
| 2012-08-06 11:31
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