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都市の除染についてちょっと考えてみる

郡山市 表土除去作業前後の放射線量測定結果によると、軒並み50~70%、元々線量の高かったところは90%低減という顕著な結果が出ているようである。

 都市部の除染に関していえば、文科省流の「天地返し」などという実効面・コストパフォーマンスの点で大きく疑問符の付く方法より現実的な方策であることが強く示唆されたのではあるまいか。

 チェルノブイリから得られた知見で明らかなように、農地には農地の、都市部には都市部の対策を考える必要があり、土の持って行き場がないから「天地返し」で、みたいな場当たり的な対策では実行性がないと言わざるを得ない。

 今のところ確かに除去した残土の処理が問題になっているようだが、これはおそらく、下水汚泥処理と同じで「なんとかしないといけない」わけだから、類似の戦略が取れるのではないか。
 つまり単純には、沈殿-焼却でできるだけセシウムを濃縮回収して嵩を減らして、避難区域で人がいない場所にとりあえず保管するとか、俺がかねがね主張しているように、適切な固化を施した上で深海投棄なりとか、色々方法は考えられるはずだ(後者にはもちろんロンドン条約はじめとする縛りがあるので諸外国との調整が必要だろうが)

 いずれにしても、一回こっきりでコスト高な「天地返し」よりは現実的な解に近いと思う。

 都市部の除染と言うことでは、もうちょっと知見を集めるといいだろうと思うのは;

コンクリートやアスファルトの道路に対する除染で、例えばロードスイーパー(ブラシ式路面清掃車)はどのくらい効果があるのか(無いのか)。

 郡山の校庭除染では、コンクリート部分に対してロードスイーパーが一部使われたようだが、公表されている資料ではどの程度効果があったのかよくわからない。だが、おそらくある程度の効果は期待できる。
 またこれで効果が薄い場合には、通常の道路補修のリソースである路面切削機のようなものの利用も考えられると思う。
 たぶん、アスファルト道路は経年で摩耗していくので漸進的に表面に沈着した放射性物質ははぎ取られていくだろうが、そうすると再飛散で内部被曝というリスクもあるかもしれない。管理した状態で積極的にはぎ取ってしまうという手段は考えておいてよいのではあるまいか。

「デッキブラシでゴシゴシ」「高圧洗浄機でジャ-ジャー」にどのくらい効果があるのか(ないのか)

 文科省も「天地返し」の実験やってるくらいならこういうのもテストしてみるべきだと思うのだが。表面線量測れるサーベイメータでまず計測し、流水かけながらゴシゴシこすり、乾いた後に再度計測…である程度見通しが立つだろうと思う。

 予想では化粧レンガやタイルみたいな比較的なめらかな表面と打ちっ放しのコンクリートとかではかなり有効性が違うだろう。また、水とブラシだけではなくなんらかの洗剤(環境負荷の低いものに限られるだろうが)を加えることで効果を上げることは出来ないのだろうか。
 個人的には何かイイ感じの界面活性剤みたいなものくらいありそうなものだと思うのだが。この辺りは化学屋さんの出番だろう。

 福島県はじめもう既にやっている所は多数あるだろうが、チェルノブイリの教訓では、除染作業というのはコスト評価を行って優先度を付けないと大規模・継続的に行うことが難しいというものだった。
 例えば屋根の上の洗浄は便益(効果)はあるがコスト高なので優先度を下げる、みたいな判断が必要ということだ。
 そういった見通しを立てる為に、闇雲に洗うのではなく投下コストと得られたメリットを比較することは重要と思う。

逆にコンクリートで土壌を遮蔽した場合の効果は?

 容易に土が除去できない様な場合にはとりあえず遮蔽して被害拡大を防ぎ、本対策までの時間を稼ぐという手段も考えておくべきだろうと思う。そのままン百年放置というわけにはいかないだろうからあくまでも暫定対策だが。

 原発や核シェルタに使われている放射線遮蔽コンクリートとまでいかなくても、コンクリート製の建物の内部では外部からの放射線がかなりな程度遮蔽されることを考えると、おそらくこれもある程度の効果は期待できる(これの一番大規模なのがチェルノブイリの「石棺」だ)。少なくとも再飛散による内部被曝のリスクの低減は期待できる。

 公園の真横にコンクリートの駐車場でもある場合なら、公園はコンクリートで覆ってしまい駐車場として利用、駐車場側はコンクリートを剥がしてしまえば汚染されていない土が出てくるわけだから公園で利用というわけで万々歳なのだが、そう上手くはいかんだろうなぁ…。でも個人の庭で、小さなお子さんがいて…という場合には、遮蔽という手段は検討してみる価値があるかもしれない。

下水処理場の焼却処理によってどの程度キャッチできるのか(できないのか)

 「都市」を積極的に洗ったら、かなりの放射性物質が下水に流れることになる。現状の下水汚泥の資料からは、どの程度汚泥・焼却灰にキャッチできているのか・再飛散がどの程度起きているのかの収支がよく分からない。
 この間から書いているように、個人的には既存の減容機構で、セシウムのかなりの部分は回収できているのではないかと期待しているのだが、いずれにしてももっと詳細な調査は必要だろう。

 いずれにしても知見を集め、優先度を付けて手を打っていくという、ごく一般的なリスクアセスメントのサイクルに乗せることが重要だと思うのだ。

 そして俺は、そういう対応が出来て、又やるべきなのは、住民と対面している地方公共団体だと思うのである。
by signal-9 | 2011-05-24 18:27
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