さて、かくして建造された廣瀬中佐の銅像の写真を時代を追って何枚か紹介しておこう(ググっても大量に出てくる)。
まずは明治44年の『東京風景』から。完成直後の銅像の写真である。 市電が行き交う万世橋畔。銅像を見上げる見物人と比べるとその巨大さがよくわかる。 万世橋駅は明治45年に開業した。 この写真は開業当時の万世橋駅と廣瀬中佐の銅像。 ちょっとゴチャゴチャして見難いかも知れないから、大宮に引っ越した鉄道博物館で撮影してきた万世橋駅と銅像の模型の写真も挙げておこう。 このように、万世橋駅前の広場にドカンと立っていたわけだ。さらに位置関係を確認するために地図を一枚挙げておく。 明治44年発行の『東京逓信管理局地図』から秋葉原-須田町附近を抜き出したものである。 右上にある「花岡町 秋葉原駅」というのが今の秋葉原である。 左下のほうに万世橋駅、その敷地に「廣瀬中佐銅像」の表記がある。 『軍神』(P76)によれば、関東大震災後の区画整理で銅像移動の計画があり、その後昭和になって「震災後交叉点から引込んだ」という証言があるので、銅像を少し移動したらしい…とのことだが、現代の地図と比較してみると、「震災後交叉点から引込んだ」という証言は、むしろ区画整理で道路の位置の方が大きく変わったことを指しているのではないか? とも思える。 銅像の材質や重量の資料が見つけられなかったので確たることは言えないが、台座部分だけでも数十トンはありそうだ。「少し動かす」といっても、基礎工事まで考えるとそうそう簡単な話ではないような気がするのだが。 こちらは震災後の、立て直した万世橋新駅舎前の銅像。 ご承知のとおり、この新しい万世橋駅も現在は存在しない。 現代とは風景がだいぶ異なるので、明治大正の頃の写真だと、どうもピンとこない。 で、見つけた写真がこれ。 『交通博物館50年史』(交通博物館 昭和47年)所載の、『昭和11年 新築当時の万世橋本館』の写真である。 両国-お茶の水間の開通に伴い万世橋駅が縮小改築されることになり、昭和9年7月、その空いた敷地に交通博物館の新館(旧館は東京駅の高架下にあった)を新築することになった。 新館は、万世橋駅の基礎を利用した鉄筋コンクリート3階建の本館と、煉瓦作りの高架線下を改築改装したもので、床面積は東京駅北側高架下の博物館に比べ約5割増の5,518平方メートルであった。ただ難点は、万世橋駅舎の建物の基礎を利用したため、基礎工事の強度の関係から3階建以下に制限され、また高架線下の空洞を利用したため、観覧順路、陳列室の配置、大きさ、採光などに制限をうけ、自由な設計ができなかったことである。しかし、新たな設計のうちで、特に半円形に突出した総ガラス張りサッシュの階段部は、当時きわめてざん新な特徴の造形美として、建築学界にも大きな波紋を呼び、昭和初期名建築物の一つとしてあげられていた。工事費は移転費も含めて約40万円であった。『半円形に突出した総ガラス張りサッシュの階段部』、これは旧交通博物館の建物をご存知の方なら覚えている人も多いだろう。 てゆーか、建物の改装で多少形は異なっているが、今行ってもまだ見られる。 こちらが先日撮影してきた2008年現在の交通博物館跡地の写真である。 前庭を占領していた展示物や建屋が取り払われたので、本館建物が道路側から素通しになり、上の昭和11年当時の写真と比較しやすくなっていると思う。 同時期に俯瞰の位置から撮影した写真(交通博物館ポスターから複写)。 建物と銅像の位置関係がよくわかると思う。 もう一枚、以前にも紹介した、師岡宏次の『想い出の東京』から、昭和12年撮影のクローズアップ写真である。 俺が知る限り、銅像の細部がもっとも明瞭に写し出された写真だ。カラーでないのが惜しまれるが時代的に仕方が無かろう。引用するためにかなり縮小・圧縮している。原本はもっと綺麗なので、銅像の細部に関心のある方は原著を参照されるとよかろう。 ここでも『半円形に突出した総ガラス張りサッシュの階段部』が銅像の背後に見切れていることに注意されたい。 ようするに、以前善光号が置いてあった交差点の角、あそこに銅像が立っていたわけである。 現在の写真を撮りに行った時、台座の跡か何か、銅像の痕跡が残っていないものかとつらつら眺めてみたのだが、そこにあるのは何の変哲もない、ただのコンクリートの空き地だった。 廣瀬中佐の銅像は完全に撤去されてしまったからである。 その撤去の話はまた次回。 -まだ続く-
by SIGNAL-9
| 2008-05-16 10:52
| 秋葉原 研究(笑)
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