「リメイク」

 劇場ではスルーを決め込んで、DVDにも食指を動かされなかった樋口版『日本沈没』であるが、テレビでやってたのでなんとなく視聴。

 さて。

 最近だと、織田裕二の『椿三十郎』のような、「過去の名作」のリメイクものがけっこう出ているようだが、鑑賞しても結局のところ「完全にできあがっているモノ」を作り直す意味ってあるのかな?という疑問を持つだけに終わることが多い。

 その意味では樋口版『隠し砦の三悪人』も不安でいっぱいなのである(笑)

 ここでいう「完全にできあがっているモノ」というのは「完璧な作品」という意味ではない。

 「過去の名作」と評されるようなものは、その作品単体に対する虚心坦懐の評価みたいなものは実際上不可能ではないか、と思う。
 世に出た時代背景とか、誰がどんな文脈で評価したかとか、そういう「後付」の要素が名作を名作足らしめる部分も大きいのではないか。

 『日本沈没』からの連想で言うと、例えば『ゴジラ』の第一作目である。

 あれは今日、一般的な映画批評の文脈でもあまり悪し様にいわれることはない。
 だが、リリース当時はやれ「ゲテモノ」だ「子供だまし」だと、世間一般的な評価としては決して高いものではなかったのである。
 それが時代を経て、さまざまな文脈で語られることや、後発の作品群の中で相対的に評価が変わってきた。現在ではその「評価の上」で観る事にならざるを得ない。
 我々は作品を「見て」いるのではない、「観て」いるのである。

 さらに難しいのはこの「観る」という行為には、個人的な「思い入れ」・「思い出」のような甚だ曖昧だが強力なシロモノが関与していることが多い、ということである。
 彼女/彼氏の、「好きだったままで別れた昔の恋人の記憶」と争うみたいなもので、勝つのは容易な事ではない。

 こういう『完全に出来上がっている』モノを、わざわざ作り直して世に問うというのは、いい度胸としか思えない。

 確かに「技術」的には時代が進んだ分だけ「強化」できる可能性はある。例えば、『日本沈没』のリメイクということなら、ドラマ(いわゆる「本編」)部分はそのまま生かして、特殊効果部分だけCGで増量みたいな発想だ。
 これの極端な例が『STAR WARS』シリーズで見られたようなオリジナル製作者本人による「修正」である。作った本人がやってるんだからいいじゃん、ということで納得できてもよさそうなものだが、これとても「原点」に思い入れのあるファンからは文句をつけられる場合が多分にあるわけである。
 作品を世に出した時点で、その「作品」は、「評価・思い入れまで含めた」モノとなってしまい、製作者のものではなくなってしまうということだろう。

 ましてやまったくの別人の手によるものだと原点レイプだのなんだのと批判されるリスクはかなり高くなるといわざるを得ない。

 前作のネームバリューというのが魅力的な資産であることはわかるが、これはある意味では大博打なんではあるまいか。「昔の恋人の記憶」と同じく、リメイク作品自体の評価が、利用したはずの過去作のネームバリューとの闘い-しかもそうとう分が悪い-にならざるを得ないから。

 個人的にはリメイク絶対反対とは思わない。
 ただ、せっかくならもう少し分のいい勝負をしてくれた方が製作者側にも消費者側にも幸せなような気がするんである。
 脚本やプロットに見るべきところはあったのに製作費不足や力量不足でネームバリューはいまいちだったような作品の方が再利用の価値があるような気がする。

 『日本沈没』のリメイクではなくて『地震列島』のリメイクです、と言い張れば文句をいう奴は少なかったかも(笑)。『エスパイ』『狼の紋章』『ウルフガイ 燃えろ狼男』だったら今のほうがおもしろいものができるかも。

 いやまあ、確かに『さよならジュピター』のリメイクと謳っているモノをわざわざ観に行くヤツがいるか?という根本的な問題はあるが。

…俺はもしかしたら行くか(笑)

 SF関係ということで俺がすごく惜しいなぁと思っているものに、伊藤和典が脚本を書いた「VISITOR」(1998)という作品がある。

 これ、CGの出来があまりにもアレなんで、ほとんど注目されることも無く埋もれてしまったのだが、SF話としてはけっこうよく出来ている。焼きなおしても十分イケるような気がするのだ。
 ものがSFなんで一般受けはしないだろうが、「惜しいなぁ」と思ってるのである。

 どこかのバブリーな会社がまかり間違ってリメイクしてくれないかなぁ。
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by SIGNAL-9 | 2008-04-14 18:17 | 読んだり見たり | Comments(3)
Commented by Mr.T at 2008-04-15 08:30 x
エスパイは知らないのですが、
>『狼の紋章』『ウルフガイ 燃えろ狼男』
これは見たい...

>『さよならジュピター』
子供心にもあれはヒドイと思いました(笑)
Commented by SIGNAL-9 at 2008-04-15 09:43
>これは見たい...
『狼の紋章』はDVDで出てますね。
…オススメしてるわけではありませんよ(^^;)

>>『さよならジュピター』
>子供心にもあれはヒドイと思いました(笑)

超同感(爆)。
Commented by おた助 at 2008-04-16 14:37 x
『首都消失』に比べれば『さよならジュピター』はなんぼかましです。
そいでもって、こいつらに比べたら『エスパイ』はずいぶんましです。
いや、あくまで相対的評価ですが(^^;)

『アイ・アム・レジェンド』は見た人間の95%がリメイクとは知らなかった(俺脳内調べ)そうですが、一番館系邦画は脚本で勝負してないから、そういう風にはならないんでしょう。

ただ、クロサワ作品がリメイクされているのは、くろぱんの戦略で、リメイクさせることで旧作需要を掘り起こすためにやっていると私は思っています。だから出来はどうでもいい。というかダメな方がいい。今回のリメイクで、織田裕二、森田監督、角川春樹と皆さん火だるまです。大変です。


映画つながりでひとこと。
クローバーフィールドは必ず劇場で観ましょう。
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