『蔵』というのは、高額商品とか財宝などを火災や盗難から守るためにあるものなので、火の手や泥棒の入り込みやすそうな窓や入り口は極力小さく・少なくしてあるのが普通である。
だからこそ「隠匿」とか「秘匿」とかという画数の多い漢字が似合うし、場合によっては『淫靡』つーようなおどろおどろしいイメージも想起されようというものである。 そういやぁ、宇野浩二の『蔵の中』もフェティシュで読み様によっては淫靡な感じだし、横溝正史の同名小説は 『蔵』といえば地方の豪商豪農、蔵屋敷なんてのが思い浮かぶが、江戸幕府の米蔵群に由来する『蔵前』つー地名もあるくらいで、東京でもそれなりに数はあったはずだ。 とはいえ、今の時代の大東京にいわゆる「蔵」なんてのはそうそうあるもんでもなかろう…と勝手に思っていたのだが、意識して町歩きしていると、そんなに珍しいものでもないことに気づいた。 そりゃあ、粋なナマコ塀見越しの松に~的な、江戸から残る土蔵みたいなのは少ないが、石倉やコンクリ製のモノならあちこちで見かける。特に商工地だった下町一帯ではけっこう多いように思う。 古くからあるお寺さんの蔵は、それこそ珍しくもない。これは東上野で。 神社仏閣以外の、商工関係の蔵もある。 こちらは台東区駒形。隣が料理屋さんなのでそこの持ち物なのかも知れないが何に使ってるものなのかはよくわからない。 同じく台東区小島で。真新しく、バリバリの新築のように見えた。 こちらは蔵かどうかわからんが、何らかの貯蔵用途には違いないと思う。同じく竹町で採取。 南千住で民家の裏にひっそりと寄り添っている蔵。 これは合羽橋の道具街の裏道で見つけた。たぶん質屋さんの名残なのではなかろうか。 宇野浩二の『蔵の中』も質屋の蔵が舞台だった。質屋のことを鎌倉・室町の頃はそのまんま『倉』と呼称したそうだ。 ちなみに質屋さんの「蔵」にはお国の決めた規則があるそうで、公安委員会規則「質屋の質物保管設備の基準を定める規則」によると、大きさから材質、構造まで細かく決められているようだ。 いわく「保管設備の外壁及び屋根は、建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)に定める耐火構造(コンクリートブロツク造にあつては、C種ブロツクに限る。)又は外壁の厚さが二十一センチメートル以上の土蔵造であつて、屋根の厚さが十五センチメートル以上のものでなければならない。床は、地盤面上に設け、床下の地盤は、厚さ六センチメートル以上のコンクリートで固め、地盤面と床の高さは四十五センチメートル以上としなければならない」…。こりゃあ大変だな。 蔵が意外に多いのが、町工場などが集まった小規模工業地域。おそらく原材料の保管などに使うのであろう。 荒川自然公園付近でふたつ見つけた。 住宅地でも見かける。これは千駄木あたりの閑静な住宅地。個人のお宅なので全体の写真は自粛しておく。どうみても新築で、しもた屋風でもない一般住宅なのだが、よほど大事なものがあるのかしらん。 まあ、街中のことで、淫靡もお耽美も蜂の頭もないのだが、いったい何が保存されているのだろうと、勝手な妄想を掻き立てられるのである(笑)
by SIGNAL-9
| 2007-06-27 12:25
| 町歩き
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