上野のトマソン物件

 超有名物件なので、いまさら隠す意味がないであろうから紹介してしまうが、上野にある比留間歯科さんである。
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 近代建築の傑作として名高く、町歩きの絶好のターゲット(笑)であり、あちこちのホームページでも紹介されている。
 maskさんの「近代建築散策」によると昭和四年建築との由。
 昭和四年というとまさに大震災復興事業が一息ついた頃で、東京はモボモガが闊歩し、ダンスホール華やかなりしころだ。
 さぞや名のある建築家の手になるものと思い込んでいたが自家設計で大工さんが作ったとは驚いた。センスいいよなぁ。

 ところで。

 よ~く見ていただきたい。なんだかちょっと奇妙なトコロがないだろうか。
 わからない?

 んじゃあ、サービスで昼間の写真も見せちゃおう。
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 ほら。ヘンなところがあるでしょう。
 まだわかりません?
 ここですよ、ここ。
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 ごらんのとおり、庭木が塀の方に曲がって生えていたのであろう、わざわざ塀を幹の形に歪曲させて木を避けているのである。
 それなのに、せっかくこんな苦労をしているのに、その木は途中からバッサリである。

 いったい何故こんなことになっているのか。
 塀を作る時点で木は切断された状態だったが、なんらかの理由で完全に除外することが出来なかった、ということも考えられなくもないが、やはり、元々はマトモな木だったので生育を妨げないように塀の方で避けたのだが、後になって木の方は切断せざるを得なくなったと見るのが普通だろう。

 例えばこの写真を見ていただきたい。同じ台東区の浅草橋の裏道にそそり立つ大樹である。
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 ご覧の通り、周りの風景とはあまりにもアンバランスな堂々たる巨木が天を突かんばかりにそそり立っている。
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 俺の下手な写真だとスケール観が出ないのが口惜しいが、もはや塀を破壊しつくさんという勢いである。保存木に指定されているくらいで、こうなってはちょっと手の出しようも無いという迫力。
 上の写真でも、枝葉がすでに電線に覆いかぶさっているところが確認できるだろう。

 翻って比留間歯科の謎を考えてみると、これと似たような状況があったのではなかろうか。つまり、あまりにも木が育ちすぎてしまい、往来や電線の障害となったために、止む無く木を切断した…というのが妥当な推測なのではあるまいか。

 だが、それでも疑問は残る。

 切ってしまうのなら何故もっと根元の方から切ってしまい、塀を直してしまわなかったのだろうか?
 思い出のある木で一部だけでも残したいという思いがあるからなのか、それとも工事が面倒だから?

 真相は比留間歯科さんに取材すればいいのであろうが(笑)、謎は謎として憶測を楽しむことにしようと思う。
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 この種の物件を称して赤瀬川原平らは超芸術物件「トマソン」という概念を提唱したが、この壁の切り込みの念入りな仕事、それが事実上無駄に思える切断された木。確かに不思議な芸術的美しさを感じさせるではないか。
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by SIGNAL-9 | 2007-04-18 14:30 | 町歩き
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