「小惑星」がなくなる?

冥王星など入れる新分類、「矮小惑星」?…和名検討へ 2006年8月25日19時52分 読売新聞
冥王(めいおう)星を惑星から除外する国際天文学連合の決定で、太陽系の天体に新たな分類名がつけられたことを受け、日本学術会議は25日、新分類の和名を検討することを決めた。

 学術会議内に日本惑星科学会などの専門家らで作る委員会を作り、半年以内に和名をつけるという。

 新たにつけられた分類名は冥王星や小惑星セレスなどを指す「Dwarf Planet」、惑星と矮小(わいしょう)惑星いずれにも入らず、衛星でもない天体の総称「Small Solar System Bodies」など。

 それぞれ「矮小惑星」「太陽系小天体」と訳せるが、学術会議で、わかりやすく親しみやすい和名を検討するという。
  2006-08-25 10:00のエントリで、大した問題ではないように書いたが、すまん、完全な認識不足であった。
 これ、ある意味ではけっこう面倒くさい話なのだな。

 問題は、【特集・太陽系再編】(3)「小惑星」が消える 2006年8月21日 アストロアーツに詳しい。
 当該記事は、IAU決議前のものだが、今回の「定義」の影響に関しての問題点としてはそのまま使える話だ;

二重の意味を持つ「小惑星」

本当の問題は、さらに大きな次元にあります。なんと、IAUが提案した原案では「小惑星(minor planet)」という呼び方そのものが廃止されようとしているのです。

「太陽を回る他のすべての天体は、まとめてSmall Solar System Bodiesと呼ぶこととする。」(国立天文台 アストロ・トピックス 230)

その理由は、「惑星」と「それ以外」を区別する以上、「それ以外」の方に惑星という言葉が付いてはいけないから、と説明されています。"Small Solar System Bodies"は日本語で言えば「太陽系小天体」になりますが、惑星や衛星以外で太陽の周りを公転している天体はすべてこう呼ばれることになります。そこには従来の「小惑星」に加えて、彗星なども含まれます。今まで「小惑星」と呼ばれていた天体をまとめて定義する名称がなくなってしまうと「小惑星番号」の扱いにも困ってしまうことでしょう。

おまけに、この改称によって、日本語を使う私たちは英語を話す人よりも大きな混乱に陥るかもしれません。英語には"minor planet"とは別に、「岩石質の小天体」を示す"asteroid"という言葉が存在するのに、どちらも日本語で「小惑星」と訳されているからです。たとえば小惑星が密集する火星と木星の間の領域は、日本語では「小惑星帯」ですが英語では"asteroid belt"と呼ばれます。ちなみに、"asteroid"に含まれない"minor planet"は主に氷でできた小天体で、エッジワース・カイパーベルト天体が代表的な存在です。英語圏で"minor planet"と"asteroid"がしばしば混同されていることを考えれば、新しく定義しなおすことは意味があるかもしれません。しかし、日本人は理科の授業を受ける生徒から天文学者にいたるまで頭を抱えることになるので、うまい翻訳を考えてほしいところです。

結局セレスは「小惑星」になる?

「小惑星(minor planet)」の呼称を廃止することには、別の意図もあるかもしれません。「惑星」が増えても、「呼び名に惑星を含む天体」が他になくなってしまえば、「惑星」の中で格付けをしても混乱を招かないからです。たとえば、IAUは提案の中で「1900年以前に認められた8つ(水、金、地、火、木、土、天、海)の惑星を便宜的に『古典的惑星(classical planet)』と呼び、セレスは『矮(わい)惑星(dwarf planet)』と呼ぶことを推奨する」としています。

「冥王星や2003 UB313を惑星に」という声とは別に、「惑星は8つしか認められない」という声が強かったのも事実です。ひょっとすると、今回の原案は「古典的惑星」を非公式用語ながら提案することで、両方の意見を取り入れた折衷案的な要素があるのかもしれません。しかし、「矮惑星」は言いにくそうですね。天文用語で"dwarf"は「矮」と翻訳されることが多いのですが、"dwarf"は「普通より小さい」という意味の英単語ですから、"dwarf planet"をなじみのある日本語にすれば「小惑星」に…。


 実は、俺も最初に原文の決議文を読んで、"dwarf"の訳に迷った。一般紙を見ていると暫定的に「矮小惑星」か「矮惑星」が使われていて、『あ、そういや、"dwarf galaxy"って"矮小銀河"なんて訳がされていたような…』とぐぐってみたら、そうだったんで、『矮小惑星』つー訳を当ててみたのだが、「"小惑星"と"矮小惑星"だとどっちが大きいのか字面から分かりにくいようなぁ」と思っていたのだ。

 よくよく読んでみると"minor planet"や"asteroid" という言葉に代えて"Small Solar System Bodies"(「太陽系微小天体」とでも訳すのか)となるようで、だとすると日本語訳の"小惑星"の立場がなくなってしまう。要するに、「小惑星」は「惑星」ではない、とするわけだからな。
 大・中・小でいいじゃん、というわけにはいかないのだ。

 まるで玉突き現象だが、マジメに考えると「小惑星」という日本語訳は変更せざるを得ないわけである。

 さて困った。冥王星降格なんかよりよほど影響がでかいんじゃないか、これ。

 宇宙戦艦ヤマトやミレニアム・ファルコンの"小惑星帯"の激闘、こういう使い方ができなくなっちゃうわけだな。

 「小惑星」をナシにして、新たな訳語で統一するのか、それともグローバルスタンダードには目を瞑って「小惑星」を生かすのか。日本学術会議のセンスが問われる(笑)。
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by SIGNAL-9 | 2006-08-28 10:11 | 一般の話題
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