ファンとホリエモンと認知的不協和

 1920年アメリカ大リーグで発覚した八百長事件、いわゆる「ブラックソックス・スキャンダル」で、法廷に引き出された人気選手シューレス・ジョーにファンの少年が投げかけたとされる「嘘だといってよ、ジョー」という有名なせりふを思い出した。

 ひとつは韓国の論文捏造問題で、である。

変わらぬ黄教授支持者、彼らはなぜ… 中央日報 2006.01.23
「あなた1人さえ埋葬されればよいというその群集と最後まで争って勝つでしょう」--。

21日午後6時、ソウル光化門(クァンファムン)前の開かれた市民広場。

全国から集まった黄禹錫(ファン・ウソク)教授支持者2500人が、太極旗を振りながら「研究再開」「特許守護」などと声を上げていた。

ある女性は「国のために働いたあなたの手/愛情にあふれています/あなたの手に背く者/偽りを言う者/死ぬでしょう」と、献呈詩を朗読した。

在米科学者として紹介されたチョ某さんが壇上に上がり「卵子供与など消耗的な倫理論争を中断し、われわれの生存権を得よう」と叫んだ。割れんばかりの拍手が響いた。

この日のキャンドル集会は「アイラブ黄禹錫」「韓国せき髄障害者協会」など5団体で構成された「黄禹錫研究再開国民連合」が主催したイベントだ。黄教授と何の関係もなく自発的に参加した一般市民たちもかなり多くいた。
 日本で言うと全盛期の長嶋茂雄が殺人事件起こしたくらいの感じかねぇ(笑)。まあ、俺も長嶋茂雄原理主義者なので、もしもそんなことがあったら「ナガシマだったら殺人くらいイイじゃん」とかいっちゃいそうだが。
 ナガシマさんを引き合いに出すなんて不敬だ!といわれそうだが、そのナガシマに対する熱い思いを数倍に増幅すると、陰謀論にまで突入しているファン教授擁護者たちの「感情」に近いのかもしれないな。

 もうひとつが、ライブドアショックを巡る、livedoor社長日記のコメントだ。

 まあ、こちらのほうは悪口雑言罵詈讒謗毀誉褒貶揶揄嘲笑各種含めたゴッタ煮であるが、「堀江さんは絶対悪くない!!」「俺はライブドア信じてるぞ~!!」といった盲目的ラブコールや、それと相対する「氏ね」だの「とっととくたばれ糞豚!」だのといった盲目的罵倒をみるにつけ、黄教授のケースもホリエモンのケースも、「嘘だと言ってよ」すら突き抜けて、認知的不協和理論のサンプルとして使えそうな反応が観察できるところが非常に興味深い。

 ひとつの認知の逆の側面が別の認知によってもたらされる状態になると、人は不快感を感じる。その不快を解消するには、大きくわければ;

1:認知の方を変える。
 ソウル大学捏造確認→ソウル大学は陰謀を企んでいる
 守旧派の陰謀だ。自民党の耐震偽装矮小化工作だ

2:新たな協和できる情報を集める
 他にもノーベル賞候補になりうる優秀な研究者がいる
 欧米のマスコミではホリエモン擁護派もいる

3:問題の重要度を低くする
 日本にだって「ゴッドハンド事件」があったじゃないか。他の国だって科学者の捏造なんかいくらでも…
 粉飾決算なんてどこの企業でもやってる

 「世界は○月×日に破滅する」なんて予言を信じてしまい、行くとことまで行ってしまうと、いざそれが外れた時にでも、もはや引き返せない→ますますのめり込むつーパターンがあるそうで、アツくなっている人たちにとっては、おそらくもう、ES細胞が股火鉢とか粉飾決算が蜂の頭だとかはどーでもいいのであろう。

 韓国の例で言えば、当の黄教授自身が「世界生命工学の高地に太極旗を立てた」だの「科学には国境はないが、科学者には祖国がある」だの、ナショナリズムを煽るような発言で人気を獲得してきたわけだ(後の方はパスツールか誰かの盗作のような気もするが)。マスコミ・企業・政府まで一丸となって物心両面でそれを後押ししてきたわけであるから、韓国内では「科学」なんてどーでもいいところで騒ぎでかくなっているわけである。

 ライブドアの方も似たようなもので、先日までホリエモンホリエモンと客寄せパンダ扱いしていたテレビメディアが手のひらを返して非難に回るというのは、節操のある態度とは思えない。まあ、当のホリエモン側にしてもそういうメディアを今までさんざん利用してきたわけであるからいまさらマスコミ批判もできなかろうが。

 どちらの事件も捜査中だし、黄教授もホリエモンも実際上無罪を訴えているわけであるから、これからどう転がっていくのかまだ分からないが、少なくとも戦場はもはや「事実関係」の領域だけではない、ということになるのだろうな。
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by SIGNAL-9 | 2006-01-23 13:35 | 奇妙な論理 | Comments(0)
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