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1株1円で61万株

重過ぎるミスの代償 みずほ証券 誤発注 2005年12月9日 読売新聞
8日の東京株式市場で、みずほ証券が大量の誤発注を出した原因は、受け付けた売り注文の価格と株数を誤入力したうえ、警告も見落としたというお粗末な管理体制にあった。270億円の含み損を抱えたうえ、今後、損失を被った投資家から損害賠償を求められれば、財務負担は重くなり、みずほ証券の経営を直撃するのは必至だ。
事故続きの証券関係、いったいどうしたんだ?

 たった1行のミスから始まって1年分の売上がパァというのは悪夢のような話だが、投資家や、未決済株の後始末のために売買停止までされてしまったジェイコムにとっては悪夢どころの話ではなかろう。
担当者がコンピューターに注文を入力する際に、「1株61万円で1株を売る」とすべきところを、誤って「1株1円で61万株を売る」とする注文を出した。

 この際、コンピューターの画面に、異常な注文内容を示す警告が表示されたが、担当者がこれを無視して発注してしまった。「警告はたまに表示されるため、つい無視してしまった」

担当者は、誤った注文を出してから、1分25秒後に誤りに気付き、3回にわたり、売り注文を取り消すための指示を送ったが、東証のコンピューターに認識されなかった。東証と直接結ぶ売買システムも使って取り消そうとしたが、こちらにも失敗した。


何故取り消せなかったのかについては続報が出ている。ジェイコム株 東証、終日売買停止に 2005年12月09日 東京新聞
みずほ証券が誤発注を取り消せなかった原因については、取り消し注文の内容が誤っていたためだったことが分かった。同証券は八日、ジェイコム株を「六十一万円で一株の売り」を「一円で六十一万株の売り」と誤って発注。売り注文を出したとほぼ同時に初値六十七万二千円が付いた。

 初値をつけた時点で自動的に、取引できる値段の下限(ストップ安)は五十七万二千円、上限(ストップ高)は七十七万二千円と決まった。同証券の売り注文も自動的に値幅制限の下限値「五十七万二千円」に変換された。同証券は繰り返し注文取り消しの操作を行ったが、売値が「一円」に設定されたままの状態だったため東証のシステムに認識されず、取り消すことができなかったとみられる。

 自動的に注文内容が変わる点について東証は、「常識と思っていた。一円の注文を取り消そうとするとは思わなかった」(天野常務)と指摘し、認識の違いを明らかにした。注文が制限値幅を超えた場合の扱いは、東証の業務規定に明記されている。

 東証の売買監視担当者は誤発注に気づき、みずほの担当者に三回にわたり取り消しを要請したが、みずほ側は「うまくできない」と回答。取り消しの注文内容が誤っていたことには双方とも気づかず、十分程度で売り注文の六十一万株すべてが買われてしまった。東証は、値幅制限下限の五十七万二千円で取り消し注文を出していれば実際に取り消されていたはずだと説明している。


話だけ聞くと、今まで運用できてたのが不思議なくらいだが

  1. 入力ミスの警告を無視しちゃったこと
  2. そもそも空売り(元々の株式が61万株も存在しない)になるのにそのまんま市場に通してしまったこと
  3. 取り消し注文のオペレーションが間違っている事に誰も気がつかなかったこと

コンピュータ屋の目で見て他山の石とするとしたら、
  1. そもそも無視できるようなものは警告メッセージと言えないのではないか。一定の閾値を超えるようなケースでは、必ず何らかの認証認可のサブシステムに流れるなり検討されているべきなのではないか。
  2. 「やろうと思えば」「空売り」ができることと、それが「いつでもできる」ことには大きな差がある。破天荒な-つまり閾値を越えたと見なせるような-操作にはそれなりの持って回った手順が必要なのではないか
  3. 取消注文の入力には今回のような「入力ミス」の取り消しというケースは考慮されていなかったのか。
…いくらでも挙げられそうだ。

---------12月13日 追記
その後、結局上の東京新聞記事-非は取り消し注文を間違えたみずほ側にあり-と異なり、東証側の取り消しシステムに問題ありということで決着したようだが、本エントリの結論部分は変わらない。ホントによく今まで運用できてたものだねぇ…
by SIGNAL-9 | 2005-12-09 15:13 | 電算機関係の話題
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