「都市部での放射性物質の沈着と除去について」

Deposition and removal of radioactive substances in an urban area / Riso National Laboratory / Oct 1990

 チェルノブイリ事故後のドイツ・スカンジナビアでの調査に基づく論文。結構引用されている。この論文の引用先で引いていくと同趣旨の論文が多く見つけられる。
  • コアが完全に溶融し、原子炉格納容器から核分裂生成物が大気中に漏れ出した場合、外部被曝の主因は短期的にはヨウ素131及びそれよりは少ない程度のルテニウム、長期的にはセシウム同位体である


  • 都市部では緑化地域の汚染が一般に被曝に対し大きく寄与する


  • 様々な除染手段のコストパフォーマンスを検討したところ、緑化地域と道路の除染が比較的費用対効果が高く、優先すべきであることが示唆された。

以下、俺が読み取れたところをいくつか。真面目な翻訳ではないので興味がある向きは原文を参照して欲しい。

【5/24追記】
こちらにIAEA報告書(2006): チェルノブイリ原発事故による環境への影響とその修復の抄訳をされているサイトがあった。内容としてはこちらの方が詳細かつ判りやすいので、こちらを参照されるとよいだろう。
  • 農村部に適用できるデータの内、都市部にも通用するものはあまりない(農村部と都市部では対策を別に考える必要がある)


  • 都市部の放射性降下物の分布パターンは、天候・土壌・放射性物質の種類(核種)によって大きく異なる


  • ヨウ素は「硬い表面」にはほとんど沈着しない。逆にセシウムとルテニウムはこれらの表面において非常に有意


  • 湿性沈着(wet deposition)の場合、降水や道路の清掃によって、最初の数日でセシウムのおよそ60%がアスファイルト・コンクリート・花崗岩の舗装面から取り除かれた


  • セシウムの乾性沈着速度は、垂直の壁に対するそれは、道路上のそれより5から10倍低い


  • 波上の屋根や芝生のようなラフな表面への沈着速度はよりいっそう高い


  • 屋内での沈着は家具などの状況によって異なる


  • 木や低木は被曝の遮蔽という意味ではあまり役に立たない


  • 放射能雲が通過している間は屋内待避により吸入被曝が顕著に減らせる

つまり、

  1. 乾性沈着の場合、庭木や茂みが主な放射線源になる。屋根は、小さな家では同じ程度重要

  2. 湿性沈着の場合、地面(庭の地面や道路表面)が主な放射線源になる。屋根は同じく重要

ということから、除染の優先度としては

■乾性沈着の場合

  1. 木や低木の刈り込み・土壌表面の除去・庭の掘削が最優先。

  2. 道路の除染が同じ程度に優先度が高い

  3. 屋根の清掃はコスト見合いで優先度が低い


■湿性沈着の場合

  1. 土壌の除去・庭の掘削が最優先


 ということのようだ。

 「都市部」とはいっても、モデルになっているのは上下水道などのインフラや共有スペースが大規模にある「大都市部」ではないようだし、西欧の「都市部」と日本の「都市部」では大分事情も違うだろうとは思う。
 日本の都市部では、広い庭が各戸にあるようなこともなかろうし、屋根の除染はコストの割に効果薄いので優先度低とされているが、日本独特の木造家屋の瓦屋根の場合どうなるんだろうとか。

だが述べられている知見は、今我々が直面している状況と良く一致していて参考になりそうなものもある。

ざっくりくみ取ると、都市部の除染を考えるのなら、
  1. 農村部などとは異なる方針で考える必要がある

  2. 重要度が高いのは「緑の多い地域」

  3. 重要度とコストによって優先度を付けるべき

といったところだろうか。
[PR]
by signal-9 | 2011-05-20 12:37 | 東電災害 | Comments(0)
<< 調べてないのなら「風評」もクソ... 東葛6市、県に放射線調査を要望 >>