「区」とか「市」はもう少し動いてくれないのか。3

■現状
  1. 文部科学省が発表している大本営発表-福島を除く「都道府県」レベルのモニタリング数値は、地上10メートル以上の空間線量を計ったものであり、この数値はその「地点」の目安にはなるが、「地域」の状況を示しているわけではない。
  2. 今のところ、事故直後のような大量の空中放出という事態は再発していないようだ。
  3. すでに大量降下から一ヶ月以上が経過した。3月23日に雨の影響で降ってきた半減期の短い放射性物質はほとんど減衰(例:ヨウ素131は元の6%程度)しているはず。逆にいうと、今時点の線量は半減期の長い核種によるものであり、ほぼ底値と見られる。つまり今後はもう劇的には減らない。
  4. 未だ原発からは絶賛漏洩中であり、大量飛散の可能性もあるので空間線量モニタリングは緊急事態対応の意味はある。しかし、「既に降ってしまった放射性物質との同居」を前提にした「普通の生活」における意味はあまり無い。


■事実1:文科省は具体的な除染の作業は何もするつもりがないようだ。

笹木竜三文部科学副大臣と記者のやりとり
記者)
 どうして、校庭にトンボをかけるような形で、表面の上澄みだけどこかへ捨ててしまおうという発想にならないのでしょうか。そうすれば簡単に校庭の放射線量は減っていくという科学者もいますが。

副大臣)
 そういうことは、特に議論にはなっていません。むしろ、今、早くこの基準を出すことが大事だろうというふうに考えて、この原則を出しています。ただ、生活上のいろいろな注意とともに、そういう現場における対応等も、今後も更に付け加えていく可能性はあると思います。今時点は、この年間で20ミリシーベルトという基準にのっとって、再調査した結果を踏まえて早く発表を出すことが大事だということで、対応についても発表させてもらいました。

記者)
 今後、放射性物質を取り除く活動はしないんでしょうか。グラウンドは表面を削る、そのほか壁とかは、雑巾で拭くとか、何か落ちるものを付けて落とすとか、子どもが触ったり遊んだりしても大丈夫なように、教職員や文科省の人が行って取り除いちゃう、もう心配ないですよというふうに。

副大臣)
 生活上の指導も含めて、あれをやらないと安全ではないということじゃないんですが、例えば時間設定じゃないんですが、それ以外の子どもに対する生活上の指導を先生に行ってくださいと、その通知も一緒に出したわけですが、あれをやらないと安全じゃないということではなくて、更に放射線量の影響を受けるのを減らすためにこういう方法がありますよということで通知をしています。それと同じようなことで、そういういろいろなやらないといけない課題が、今後も当然、出てはくるだろうと思っています。まだ、それを具体的に決めている段階ではありません。

まとめ:文科省は調べて通知するだけ。実作業に関しては検討もしていない。

■事実2:アテにならない地方自治体の対応

 一例を挙げると、俺も指摘していたが「葛飾や柏辺りが、他の地域に比べて有意に空間放射線が高いのではないか?」という疑問がある。これに対する柏市役所の公式回答がこちら
Q1.新聞等で見られる千葉県(市原)の数字に比べて、東京大学柏の葉キャンパスや国立がんセンター東病院で独自に測っている数値が高いが問題ないのでしょうか?

東京大学柏の葉キャンパスや国立がんセンター東病院での数値が高いのは事実ですが、現状の水準では健康には、子どもも含めて全く問題ないと、東京大学、国立がんセンターからもコメントをもらっています。

また、市としましても、放射線に関する専門家のコメントなどを読む限り、健康に問題はないと認識してます。

上記2箇所の数値が高い要因として、そもそも、測定のやり方や場所によって数字は変わることがあげられます。
(中略)
このような理由により、文部科学省などが公表している近郊の放射線量率に比べて高めの放射線量率ではありますが、両機関の専門家の意見としましても、人体に影響を与えるレベルではなく、健康にはなんら問題はなく、特段の対策は必要ないと見解を示しており、柏市も同じ認識をしています。

Q2.市としても独自に測定すべきではないですか?

柏市独自での測定を行う予定はありません。

調査、測定、評価には各県の研究機関において、専門機器に熟練した技術職員が必要となることや、測定方法等による誤差を考えれば、結果は同じであり、継続的に東京大学等の数値を把握し、専門家の意見を参照すれば良いと判断しています。この数値の変化については、柏市としても注視し、急激な上昇がある場合については、専門家に問い合わせ、適切な対応を図っていきます。

Q3.柏市では通常に生活するのに問題があるのでしょうか?
普通に生活していて問題ありません。「独立行政法人 放射線医学総合研究所」から4月14日付けで次のとおり見解が出ています。

「文部科学省発表の空間線量率を見る限り、神奈川、埼玉、千葉、群馬、栃木はおおよそ東京と同じくらいと考えて下さい。茨城は、大気中の放射線による線量は、文部科学省が発表したデータから累積し、通常時の平均値分を除くと、データのある3月15日以降で66マイクロシーベルトを超える程度です(1日8時間屋外に居たとして)。普通に生活して下さって問題ありません。(放射線被ばくに関する基礎知識 第6報)」
質問と回答がかみ合っていないのである。

 「文部科学省発表の空間線量率を見る限り、」と前提条件が付いていることに注意が必要だ。
 このブログでも再三繰り返しているように、文科省の計り方は平時にγ線を正確に計る為に地上10メートル以上のモニタリングポストで計測している値だ。今のところ大半の放射性物質は地表に落ちているので、そりゃあ積算しても66μSvくらいに収まるだろう。
 市民が不安に思っているのは、この値ではなく、東大の柏の葉キャンパスなどでは常時0.4~0.5μSv/hが計測されている、という点である。
 1ヶ月の積算は66μではなく0.4*31の372μで、この値が今後(4月以降)ずーっと続くとすれば(その可能性は高い)、単純積算では3~4mSv/yになってしまい、安全だと言われている1mSvを大きく越えてしまうということなわけだ。

訂正。その後掲載されたFAQによると、東大の測定はバックグラウンド込みなのだそうだ(俺はこの記事を書いたときには、文科省方式で抜いてあるのだと思っていた)。だとすると、日本の平均的な自然被曝1.5mSv/yに基準1mSv/yを加算した 2.5mSv/yあたりの値と比べるのが正しい。よって「1mSvを大きく越えてしまう」は訂正させて頂く。ただし、本項の論旨は変わらない。

 「柏市民なんだけど、柏の放射線量が他に比べて高いのが不安。このままずっと住んでて大丈夫なの?」

 「面積114.90平方キロ、人口381,535人の柏市ですが、東大の柏の葉キャンパスなどピンポイントで測定した結果で急にヤバくなった場合だけ対応を考えます」
 「ウチが調べても正確な値は出せないので他人任せです」
 「大丈夫大丈夫独立行政法人が大丈夫って言ってるから大丈夫」

 これで質問した市民は「ああ、よかった安心安心」と思えるだろうか。
 何故、既に降ってしまっている放射性物質の汚染状況ではなく、緊急対応の空間線量だけをウォッチすることで事たれりとするのか。

 つまり質問と答えがかみ合っておらず、答えに都合のいい「根拠」を採用していると思われても仕方がないだろう。

 個人的には俺も、金町や柏の現在判っている程度の線量は絶対に他にも出ている(調べていないから判っていないだけ)だろうし、このレベルの線量ならマクロ的には大騒ぎする必要はないと思う。

 だが、そのことと、「市民に安心を与える」のは質が違う話である。

■動き始めた地方自治体もある。

 一方で、地域住民の安心-ひいては地方自治体の税収維持(^^;)のために独自に動き始めた地方自治体も出てきた。

長野県松本市では独自に計測機器を購入し、市内の複数の場所での定期観測・データ公開を始めた。
福島県郡山市は市内28の小中学校と保育所で、放射性物質が含まれているとみられる校庭・園庭の表土(深さ2~3センチ)を試験的に除去すると発表した。

 俺的にはこっちの方が「正しい地方自治」のあり方だと思うのだが、どうか。

 「積極的に何もしない」というのは、平時においては有効な役所流処世術かもしれないが、今回のようなケースでは自分たちの首を絞めることになるだろうことは以前から指摘しているとおりだ。

 今のところ俺は、将来次のようなことが起きても驚かない。

「市役所は独自に調べる気がない」→「調べるとヤバいことがはっきりするからだ。何かを隠しているに違いない」→「ヤバいかどうかもわからない、こんなところには住めない」→住民流出・不動産価格の下落その他諸々→税収減→市役所大リストラ。

 何でもかんでも「風評被害」で片付けるのは勝手だが、「風評」を生み出しているのはいったい誰なのか。

【追記】
表土を除くという郡山市に、何もする気のない文科省が文科相、福島・郡山の小中学・表土除去に「事実関係確認したい」 2011.4.26 13:21 産経
高木義明文部科学相は26日の記者会見で、原発事故を受けた放射線対策として、福島県郡山市が小中学校の校庭などの表土を取り除く方針を示したことについて「市としての独自判断だと思うが、事実関係を確認したい」と述べ、取り除いた土の処分方法なども含め、福島県を通じて詳しく事情を聴く意向を示した。

 また高木氏は、ほかの地域にある学校での表土除去の必要性について「その都度放射線量を計測して、基準以下であれば必要はない」と述べた。
いや、だからぁ、「取り除いた土砂は市内の埋め立て処分場に運ぶ」し、「子どもの安全を考慮して文科省より厳しい基準とした。土砂の最終処分法は今後検討する」つってるわけだ。なにが気に入らないのだろう?
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by signal-9 | 2011-04-26 13:57 | 東電災害 | Comments(0)
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