「区」とか「市」はもう少し動いてくれないのか。

 東京在住なので、土地勘のある東京を例に引くが。

 文部科学省「全国大学等の協力による空間放射線量 」PDFによると、
東京都文京区での、4月9日から4月10日までの1日(24時間)での空間放射線量の積算は4μSv/dとなっている。

 おそらくバックグラウンドを差し引いていないだろうから、実際の事故由来の値がどの程度なのかは不明だが、すでに事故から一ヶ月を経過しており、半減期の短いI-131由来の線量は元の15%程度に減っているだろうから、これ以上大きく下がることはないのかもしれない。
 ということで、これを底値と仮定して年間に換算すると×365で1460μSv( 1.4mSv/y )。バックグラウンド込みとすれば問題になる値ではなかろう。あくまでも空間線量としては、だが。

 ところでこの文科省の資料、元は東大の本郷キャンパスの調査と思うが、この大本の調査をみるといろいろ疑問が湧いてくる。

 4/11の15:00 断面で、「本郷(1)」が0.15μSv/h(3.6μSv/d=1.3mSv/y) で、「本郷(2)」が0.07μSv/h(613μSv/y)と、倍半分も違う。小数以下2桁あたりでは計測器の誤差や計測場所によってかなりの幅がありそうなことは考えられるが、東大構内は、でかいとはいえ高々2km四方に収まるくらいだ。この範囲内で倍半分も差があるものなのか(絶対値の高い低いを問題にしているのではないことに留意願いたい)

 放射線・原子力教育関係者有志による全国環境放射線モニタリングをざっと見渡すと「東京都葛飾区金町」の値が、他の場所に比べて高く、他の観測では明確に見てとれるI-131の減衰による低減傾向が見られないということに気づく。
 半減期という物理法則は動かないのだから、線量の高低は別として低減傾向は見えていいように思うのだが。計測方法の問題など何か別の要因があるのかもしれないが、どうもよくわからん。

 葛飾が相対的に高いという一点に注目して、IやCsも一般的なNO2や浮遊物質みたいな挙動をすると仮定すると、大気汚染地図情報(速報値)で見られるように、23区で言えば、海に近い低地の、中央部から東側により集まるような傾向があるのだろうか?

 そういえば、国立天文台の方が福島の線量率の可視化(PDF)を行ってくれているが、これを見ると地形の効果はかなり大きいらしいことがわかる。まるで北西方向に流れた放射性物質が、その後低い地形に沿って南西に流れたみたいに見える。

 ところが一方、3/12-4/5までのSPEEDIによる外部被ばく積算線量試算値では、相変わらず北西及び海沿いの南方向の汚染情報しか出ていない。

 実測値に基づく上と比べてみると印象が異なる。

 もうひとつ、国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)敷地内における放射線の測定結果をみると、屋外(駐車場コンクリート面)と土壌(芝生面)ではかなり有意な差が見られる。
 これもまた平常時のバックグラウンド(芝生の方が元々高いのか)がわからないが、Csは土壌の表面に定着するということを考えると、もしかして比較的普遍的な傾向を表しているのかもしれない。これがフツーのKとかRn由来の差異だったらよいのだが。
 小さな子どもやペットは土の多い場所-公園や河岸とか-では遊ばせない方がいいのだろうか…

 …と、あれこれ憶測しなきゃいけないのは、そもそも
  1. 観測点が少なすぎる
  2. 観測方法(機器や位置など)がまちまち
つーところに起因する。

 文科省とか水道局とか、個別にがんばっているのは理解できるし、自前で観測を行ったり集計を行ったりしておられるボランティアの方たちの努力を否定するものではない。
 しかし、そもそもそういう活動を行わなければいけないのは何故かといえば、各地方公共団体(「区」とか「市」)の情報提供が足りていないからなのではないか。

 NHKでは毎晩「今日の各地の放射線量」みたいな報道を行っているが、例えば東京で言うと、そこで使われている数字は新宿区百人町のものだ。
 23区のそれぞれのホームページを見ても、自前で自分のところの区民の為に線量の測定を行っているところは見あたらない。ほとんどがこの健康安全研究センターへのリンクで済ませているようだ。足立区は3月27日まで自前で調査・公開していたが、観測機器が故障という理由で中断している(情報統制?と邪推したくなる)。

 本郷の例のように、同じ町内というごく狭い範囲でさえ、この数字は倍半分も異なるのだ。
 新宿での計測結果と葛飾での状況が一致すると考える方がおかしいのではないだろうか。 
  1. 天候や地形の影響で、放射性降下物の量は、狭い範囲でもかなり違いがありそうだ
  2. コンクリートや土など、地面の様子でもかなり違いそうだ
この程度は妥当な推測だと思う。このような状況で、「新宿区百人町」の結果で東京23区を代表させる的な「発表」はミスリードになりかねない。

(4/15追記)
健康安全研究センターで
FAQページが公開された。
それによると、この空間線量は地上18メートルでの計測とのことである。この方法が妥当なのかどうかは俺には判らないが、他のところは概ね地上1メートルあたりで計測しているのではないだろか。
 少なくとも俺は、この値を別のどこかの値と比較して、高い低いを判断するのは躊躇われるなあ。

 福島第一原発はまだまだ放射性物質の大量流出の可能性があるので、速報性という意味で空間線量の測定の充実も必要だろう。
だが、既に空間線量の増減だけで一喜一憂する段階は過ぎていると思われる。

 そろそろ各地方公共団体は、独自に汚染の実態把握と対処に動くべきなのではあるまいか。
[PR]
by signal-9 | 2011-04-13 12:56 | 東電災害 | Comments(0)
<< 「区」とか「市」はもう少し動い... 東京電力災害に関する備忘 >>